北沢楽天の絵馬 【一宮町指定有形文化財(絵画)】

 

北沢楽天の絵馬(きたざわらくてんのえま)

平成15年2月12日指定  一宮町宮原 南宮神社

 

北沢楽天(きたざわらくてん)は、明治9年(1876)大宮市(現さいたま市)に生まれ,洋画,日本画の基礎を学んだ後,横浜で西洋漫画の技法を学び,明治32年(1899)に福沢諭吉に才能を認められて時事新報社へ入社しました。その後,明治38年(1905)に出版した時局風刺雑誌『東京パック』が絶大な人気を得て,「ポンチ絵」と評価の低かった風刺画を近代漫画として確立し,日本初の職業漫画家となりました。

楽天は,一宮町が「東の大磯」とよばれ,別荘地として栄えた明治末頃から亡くなる昭和30年(1955)まで,一宮川沿い(当時は八積村)に購入した別荘を頻繁に訪れました。大正元年(1912)には自分で経営する楽天社という出版社から『一宮案内記』を刊行するなど,一宮との関わりが深い人物です。

この絵馬は,大正5年(1916)7月30日に起きた洪水で流れた別荘の門扉4枚のうち唯一残った一枚に楽天が直接,水魔克服の鎮守の神を描き,南宮神社へ奉納したものです。

漫画だけでなく日本画の素養もある楽天がダイナミックに描いた絵と文字は今でも当寺の色彩を鮮明に残しています。

大きさは縦87cm,横156cmで,別荘地時代の名残と一宮川の歴史を伝える貴重な資料です。