平成24年8月

8月20日                      町長

海外行政視察で感じたこと
                            
 今年の7月、関東町村会主催の海外行政視察でポルトガルとスペインを視察してまいりました。一番強く感じたことは、日本と両国は歴史も自然条件も大きく異なっているが、自治体が現在直面し取り組んでいる課題は全く同じだということでした。まさに世界は一つということを実感いたしました。
初日の訪問先ポルトガルのリスボン保育協会では、個人の成長と調和した生活のための教育を目的として設立された民間の非営利団体で自閉症や発達障害の子供たちへのサポート活動や柔道、英語などの課外活動にも力を入れていました。
日本では、保育所に入りたくても入れない待機児童が大きな問題となっていますが、そのようなことはないようです。日本では保育と幼児教育を統合したこども園がようやく制度化されようとしていますが、ポルトガルでは、幼児教育に力を入れていて日本と比較して手厚い保育手当などもあり、小学校就学前の4歳児から6歳児まで実質的に義務教育化されているとのことでした。私たちが訪問したリスボン保育協会では、4歳児から英語を教えていました。小さい子供のころから個性を重視した保育と教育が行われていることに感心しました。幼児教育の充実にもっと日本も力を入れる必要があると痛感しました。
4日目に訪問したスペインのコンスエグラ町では、農業関係者との意見交換会を行いましたが、スペインでも日本と全く同じ問題に直面していました。
スペイン農業の主産品は小麦ですが、大規模耕作のアメリカやオーストラリアから入ってくる安価な小麦からスペインの農家を守るため日本のコメと同じような価格所得政策が実施されていますが、他のEU加盟国との価格競争があり決して楽ではないということでした。そして一番深刻な問題は農業後継者不足であり、農業従事者の高齢化です。理由は労働時間が長い、休みが取れない、収入が低いとこれは日本と同じです。日本では貿易の自由化をめぐりTPPの加盟が大きな問題になっていますが、農業問題の解決の難しさをあらためて実感しました。
スペインでは、モストレス市、コンスエグラ町、カンプロドン町、リボジェ郡市町村連合を訪問し、地方自治について市町村長と親しくお話ししました。  
日本では住民の直接選挙で選出された市町村長と議員が組織する議会が住民を代表するいわゆる二元代表制が地方自治の基本的な仕組みですが、スペインでは、市町村長は議員の中から議員の選挙で選出されます。議会の多数派が執行部をにぎる議院内閣制のような仕組みになっていました。両制度の違いには、恐らく市町村が形成されてきた両国の歴史や国民性が反映しているのでしょうから、どちらがより優れた制度なのか簡単には論じられませんが、今後日本でも論議の的になると思いました。
スペインもポルトガルも地方自治の仕組みは日本と異なりますが、年金、医療、雇用、子育て支援、幼児教育の充実、地域経済の振興など地方自治体が解決を迫られている課題は日本と全く同じでした。急速に進む経済、文化のグローバル化の流れの中で、私たちが訪問したどの市町村もその地域固有の歴史、文化、産業を大切にして地域の存立と発展に必死に取り組んでいる姿が印象に残りました。