町長日記 平成29年1月24日・25日(両総用水事業推進協議会主催による視察研修(静岡県)に参加)

両総用水事業推進協議会主催による視察研修(静岡県)に参加 

【1月24日、菊川市の農地集積・集約事業の成功例を見学】

 菊川市の中間管理機構による農地集積・集約事業の成功例を見学しました。菊川市の河東地区での農地集積は大変うまくいった事例で、大規模農家である主要「担い手」4名による農地は、22.7haから、集積後は43.9haまで増加しており、しかもほぼ一円の集約が行われています。

 また、河東地区は、大井川用水の水利の恩恵を受けている地域ですが、合わせてそのパイプライン化も補助事業として進めて、国50%、県30%、市14%、地元6%の負担割合でこれから工事にかかるそうです。このうち地元負担の6%に、中間管理事業にかかわる地域集積協力金を充当して、実際の地元負担は3%にまで縮めたということでした。

●「地元」主導で大きな成果

 この事業で驚くのは、その集積後の整然とした形態と、起案から実行までの時間が平成26年11月から平成27年11月のまる一年と、短いことです。これは、行政側のリードも効いたようですが、なんと言っても地元の方がこの事業の意義を自覚され、キーパーソンとして切り盛りを行ったことにあるそうです。

 行政の話だと、期間短縮には ①デッドラインを設けてそこから逆算したこと、②役割分担の明確化を行ったこと、などが重要なポイントで、そこから厳密なスケジュール管理も出てきたようです。主要なもので12回、全部で30回もの会合を開いて、関係書類が膨大であるなどの問題を乗り越えて、最終的に事業の完遂にまで至ったのは、驚くべき事柄です。ここでは、「地元」に事業の遂行をまかせたことが最大のポイントであり、「地元」の中心にいて、この事業に心血を注いで努力した方がおられたことが事業の成功を導いたということです。

 しかも、びっくりしたのは、このキーパーソンは、集積後の「担い手」農家には属していない方だというのです。大変驚きました。おのれの利害と関係ないことで、地域のために尽力する方がおられて、それでうまくいったということなのです。この方も、実は途中で疲れて、行政に作業を譲りたい、と申し出られたそうですが、行政では断固断ったのだそうです。もし、行政がそこで地主と借主の間の交渉など、作業を引き受けていたら、絶対うまくゆかなかったであろう、というのが担当の方の意見でした。

 また、小規模耕作を行いたい方々を、西南部の一角の区画に集めているのもミソであるそうです。ここは、地味がよく、苗場として使用される場所であったそうです。いわば、河東地区でもっともよい土地を小規模耕作希望者に割り振ったので、その方々がその区画に農地を移動することについて大変同意しやすかったそうです。

 地元の皆さんの中に身をおいて、まわりの方々にことの意義を説いて、よい方向に纏め上げてゆくことのできる、粘り強い志ある方。こういう方がおられるかどうか。一宮町でも、もっとよい町となってゆけるか否かは、そういう方がおられるかどうかにかかっているのだということを再確認いたしました。

【25日 藤枝市のファーマーズマーケット「まんさいかん」見学】

 翌25日は、藤枝市にあるJA大井川のファーマーズマーケット「まんさいかん」藤枝店を見学しました。ここはJA大井川の直売店舗として11年前にできたものです。開設から4年後には10億まで売り上げがあがり、会員となる生産者も1400名にまで上ったそうです。

 ただ、近年売り上げ・会員数とも減少傾向にあるそうです。平成28年度の売上げ目標は9億2千万だそうですが、平成27年度は9億7千万、平成26年度は9億9千万で、年々減っているとのことで、会員数は、平成28年12月で、1288名だそうです。

 売り上げ減少の原因は、「客層の変化が大きいのではないか」ということです。高齢者が退場してゆく一方で、若い人が少なく、消費が伸びないのではないか、という説明でした。ただ、この問題の原因をつかむには、来場者の人数や年齢層など、更に動向を見極めるための系統的消費者調査が必要な気がしました。

 会員減少も、高齢化が主要因だそうです。これに対しては、「アグリ講座」といわれる、農業者援助のための、圃場での実習と座学を組み合わせた講習会など開いて、新たな農業従事者を増やす試みを行っているそうです。

●「地元」の農家が主体となることの重要性

 ただ、全体としての停滞傾向の要因は、「この事業が農家主体の運営でなく、JA主体の運営ということが問題なのではないか」とのことでした。福岡の「伊都彩彩いとさいさい」、愛媛県の「さいさいきて屋」、和歌山県の「めっけもん広場」などは、農家主体の運営で強い力を発揮しているそうです。それらと比較して、自らの弱点をそう分析しておられました。

 菊川の中間管理事業の展開で学んだ、「地元の当事者が中心になってはじめて事業がうまくゆく」という王道パターンがここでも語られていたわけです。やはり、「上から」の事業展開には限界があるのですね。

 あと、ひとつ問題があります。ここの立体駐車場は大通り側に位置していて、交通量の多い大通りから、「まんさいかん」が全く見えない構造になっているのです。もとは平面の駐車場だったのですが、駐車量が多いので、立体駐車場にしたそうですが、わたくしの目からみると、位置は微妙というべきだと思います。これでは、「まんさいかん」をすでに知っている人は来るにしても、たまたま通りかかった人などの新規顧客を誘い込むことが出来ません。どうしてそうなったのか、不思議ですが、或いは事業の意思決定プロセスに問題があり、リスク回避がうまくいってなかったのかもしれない、との感想をもちました。少々残念な展開です。

●トマトを沢山買って、一宮のトマトと食べ比べます。 

「まんさいかん」では、わが一宮町と競合するトマト、一宮には少ないみかん・ポンカンなどを買いました。トマトは、食べ比べてみようと思ったのです。楽しみです。

 また、面白い話を聞きました。ねぎの根元が曲がっていたので、「わざとまげているのですか」と聞いてみたところ、これは技術不足によるそうです。藤枝の地域は、これまでお茶の生産が盛んでしたが、最近お茶の消費が伸びないので、転作する農家があるそうです。そうした場合、農家の方が蔬菜栽培に熟練していないので、まだうまくできない場合があるのだ、ということでした。土質も粘土質で、ねぎやにんじんなどにはあまり向いていないので、それらには出来があまりよくないものがある、ということでした。

 また、牧の原では、自然薯がよくできるようで、立派なものがたくさん並んでいました。24日のお昼に静岡郊外、丸子の宿の「丁子屋」でとろろ汁を食べました。歌川広重の浮世絵にも描かれる江戸時代以来の老舗です。ここで、「牧の原の自然薯を使っている」と伺いましたが、立派な自然薯を見て、「なるほど」と納得しました。