一宮城 出土遺物 【一宮町指定有形文化財】

 

一宮城 出土遺物(いちのみやじょうしゅつどいぶつ)

平成17年(2005)2月8日指定
一宮町一宮


一宮城遺物(耳カワラケ)

一宮城遺物(耳カワラケ)


一宮城遺物(青磁・染付け)

一宮城遺物(青磁・染付け)


一宮城は、現在の城山(振武館周辺)に天然の地形を利用して建てられ、
戦火によって焼失しているが、築城と落城の年代には諸説あり正確な年代や
城主については現在も不明。
この遺物は、昭和58年の武道館建設に伴って行われた発掘調査によって出土
した物で、中世城郭遺跡の遺物としては県内でも、質・量共に充実している。

遺物の種類は、陶磁器、カワラケ(土器)、武器、武具、釘などの鉄製品、
古銭、石塔、木製品、金属用品(用途不明)、玉石(庭園に敷きつめられて
いたもの)などがあり、年代は16世紀(1570年代)と推定される。
陶磁器は中国産と国産があり、中国産は白磁、青磁、染付の3種類に分けられ、
中でも白磁が多く含まれているのは他に見られない特徴。国産は、瀬戸・美濃産
と常滑産に加え、若干の備前焼を含む。陶磁器の中には青白磁の梅瓶や鉄釉茶碗
など貴重品もある。多くは戦火によるものか、火を受けて赤みがかっている。

カワラケの中でも、耳の形をした「耳カワラケ」は10点出土し、これだけの
量が一度に出土した例は県内でも珍しい。これはある程度の格をもった城(守護
またはその次くらい)から出土するもので、当時の一宮城のレベルを想定する
根拠として重要である。他にも鉄砲玉(鉛製、房総最多の出土量)や、養老川
流域の石が使われた庭園の池の玉石など、特徴的な遺物が数多く含まれている。

資料全体の内容から、城主は安房・上総地域に影響力のあった里見氏の片腕で
ある正木一門であったことは確実で、一宮が東上総の政治、経済の重要な場所で
あったと考えられる。
なお、この遺物が出土した場所は「一宮城址(いちのみやじょうし)」として、
昭和62年3月に町指定史跡となっている。