町長日記2020年10月3日(文化財講座に出席)

   今日は、公民館で文化財講座が開かれ、学芸員の江澤さんが、上総一ノ宮駅の沿革と、それもたらした社会の変化について、先着50名の町民の方々を対象に講話を行いました。参加者は25名でした。

 駅の開設は、一宮の別荘としての開発を促し、かつぎ屋の婦人の活動なども盛んにした、ということが語られ、また太平洋戦争時の風船爆弾打ち上げにも、鉄道が資機材輸送に使われたこと、さらには感染症の拡大回路ともなりえたであろうことなどが報告されました。

 中で、わたくしの心に留まったこととして、当初、明治中期に千葉県内において鉄道敷設の請願がおこったことに対し、県知事が、水運の盛んな千葉県である故、鉄道は必要ないということで、不承認の立場であった、ということがありました。現在ではおよそ想像できないことですが、江戸時代から明治にかけて、河川と、近海沿岸における船舶交通が、人員・物資の流通回路として、きわめて盛んであったことを示す証左です。

   そして、総武本線は、東京と銚子を結んでいますが、銚子については、当時利根川本流と海洋との結節点として、物流の一大拠点として繁栄を極めていたことから、そこと東京を連結するものとして、鉄道が建設されたものであると考えられます。しかし、鉄道の開通が、船舶輸送を衰退させ、結果的に銚子の繁栄にも衰退の影を落とすことになっていったのは、歴史の皮肉というべきでしょう。

   なお、新型コロナウイルス感染症の問題がありますので、厳重な感染防止の対策下での講話となりました。