町長日記 平成28年11月22日(2016年11月22日の地震に際して)

2016年11月22日の地震に際して

【避難指示を発令】

去る11月22日の朝5時59分、福島県沖で地震が起きました。M7.4、最大震度5弱で、一宮町は震度3でした。気象庁から福島県沿岸部には津波警報、一宮町を含む外房地域には、1メートルの津波注意報が発令されました。

 1メートルの津波が襲った場合、遭遇した人は百パーセント死亡するとされています。防災担当スタッフと相談して、川沿いと沿岸部に、7時45分「避難指示」の発令を行いました。

 津波は、お風呂の水が増えてゆくような静かな増水ではなくて、水の壁が自動車の速さでドーンとぶつかってくるようなものだといいます。数十センチの津波でも、巻き込まれれば転倒して溺死する危険性があるのです。増して一宮町の場合、川が開口していますから、遡上してくると、堤防を溢れて越水がおこり、深刻な問題が生ずる可能性があります。また東日本大震災の際、津波予報が当初、実際よりも低く発表されたことで、津波の規模を見誤り、非難のチャンスを失して亡くなった方々もあった、と聞きました。これも、今回、「避難指示」を発令した判断の材料となりました。

 結果としては、津波は軽微なものに終わりました。「避難指示」に続く次の段階の災害対応は必要なく、ほっといたしました。ただ、茂原以南の自治体で「避難指示」を出すと、JR外房線が茂原以南運行停止となるので、この際も電車が停まってしまいました。乗客の方々にはご迷惑をおかけしてしまい、お詫び申し上げます。ただ、事態に鑑みてお許し頂きたいと存じます。

 

【千葉県の津波避難計画指針を順守-鴨川市と一宮町だけ】

 実は、昨年10月に千葉県から津波に関する指針が与えられ、「20cmから1mの津波注意報が発令された場合、避難指示を出すように」と決められました。一宮町の対応はこの基準に順ずるものでした。外房地区で、この基準に沿った決定をしたのは、鴨川市と一宮町だけでした。

 そこで、12月28日のサンケイ新聞は「千葉県の釣ヶ崎海岸で五輪サーフィン開催決定 津波避難 万全の対策を」というタイトルで、次のような記事を掲載しました。

  同県は、津波発生時により強く住民に避難を促すため、市町村に「避難指示」のみを発令することを盛り込んだ「津波避難計画指針」を今年10月に策定した。だが、11月22日に発生した福島沖地震で、九十九里・外房と内房地域の18市町村に津波注意報が発令されたにもかかわらず、実際に避難指示を出したのは鴨川市と一宮町の2市町にとどまった。千葉県は地震後の11月末、沿岸部の市町村の防災担当者を集めた会議で「市町村に避難指示を出すことを求める避難計画指針を作った。福島沖地震のようなケースでは、積極的に避難指示を出してほしい」と要請したという。自治体側には空振りを恐れず、避難指示を出す姿勢が必要だ。

 つまり、結果的に軽微であったとしても、避難指示を出さなくてはいけない、というのが今の防災の基本方針なのです。

【避難指示の発令 もっと迅速に!】

 むしろ、今回の問題で私が反省したのは、避難指示を出すのが、遅すぎたということです。私は6時16分に登庁したのち、当初、どういう状況なのかを見極めるのに懸命で、直ちに避難指示を出すことに思いが至りませんでした。その後、千葉県鴨川市、青森県三沢市の避難指示発令のNHKニュースをみて、一宮でも出すべきだと気付きました。そこで6時55分、発令の決定をしました。ところが避難所の準備などに手間取り、実際の発令は7時45分となったわけです。これでは、「遅すぎた」と考えます。

 津波は、地震後数十分の間に第一波がやってきます。7時45分発令では、第一波に間に合いません。もっと早く避難指示を出し、平行して避難所の設営などを行うべきだったと反省しています。

【オリンピックに向け、防災体制の強化を!】

 いずれにせよ、今回の地震・津波では被害がなかったのが幸いでした。しかし、東日本大震災のように、甚大な被害をもたらすこともあるのです。常に最大限の警戒心をもって、防災・減災にあたってゆかなければならないと、改めて警戒心を高めています。

 また、上記サンケイ新聞の記事にもあるように、オリンピックへの対応という面でも、津波対策は重要です。オリンピック競技は、わずかに2日間だけですが、わが町の海岸に世界中から多くの人が集まるのですから、防災体制も十分に整えておく必要があります。県の防災危機管理部も、このために前向きに取り組んでくれています。一宮町も、当事者として、組織委員会の防災担当チームからも意見をもらいながら、最良の防災体制を作ってゆこうと決意を固めています。

【早急に津波避難計画を策定します】                 

 なお、一宮町にはこれまで津波避難計画がありませんでした。そのことは今回の津波注意報の事件の前に、11月1日の千葉日報でも報道されていましたし、わたくしも重くとらえていましたので制作を指示してありました。現在残念ながら未完成ですが、年度末までに作成するべく、取り組んでいます。